2008.01.22 (Tue)

名作で見るボーカロイドの歴史12

2009年の秋から年末にかけては、多くの新ボーカロイドに関する発表が行われた時期でした。
クリプトンがTwitterを導入した事で開発中の情報公開や意見交換が行われるようになった「初音ミクAppend」や「project if...」、突然の新規参入を果たしたAHS社の3種の新ボーカロイド「氷山キヨテル」「歌愛ユキ」「開発コードmiki」、産総研の少女型ロボットの「声」として組み込まれた内蔵型ボーカロイド「CV-4Cβ」、初めてゲームでnetVOCALOIDが本格的に使われる事になった 「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」など、新ボーカロイドに関する情報が色々と発表されています。
他にも、新設された高校や献血ルームとのコラボや、SEGAによるDIVAの新展開「初音ミク-ProjectDIVA-(新)」の発表、好評だったドワンゴ主催の「がくっぽいどコンテスト」結果発表などもあり、その度にネットニュースなどで報じられて話題になりました。
2009年の秋は、ニコニコ動画の外に広がっていくボーカロイドに様々な企業が関わるようになり、それらの企業による活動が話題の中心となった時期でもありました。




 CEATEC JAPAN 2009でHRP-4C「未夢(ミーム)」が歌っていた
2009年10月に開催された最先端IT・エレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2009」において展示された、産業技術総合研究所(産総研)の少女型ロボット「HRP-4C 未夢(ミーム)」のデモンストレーションを撮影した動画です。
産総研の「未夢」は、先端技術で作られたリアルな少女型ロボットとしてTVなどでも報道された話題の技術ですが、その「声」として初めて搭載されたのがVOCALOID「CV-4C(β)」で、デモンストレーションでは独自の声による歌も披露しました。このVOCALOID「CV-4Cβ」は声優・中村繪里子さん(アイマスの天海春香など)の声を元にしたクリプトンの試作DBで、元々一般公開の予定は無いテスト用だったそうですが、「未夢」の声として搭載するために急遽調整されて「CV」の名を与えられました。
この産総研とのコラボは、YAMAHAによって語られていた今後のVOCALOID(VOCALOID3?)が目指す方向性の一つ「小型化して様々な機器に組み込める組み込み型VOCALOID」を実現させたものですが、実はもう一つの大きな新技術の初披露でもありました。
それは2010年2月25日に初めて正式に発表された、VOCALOIDによる喋りの技術「VOCALOID-flex」で、この展示での未夢のトーク部分がflexを使用して作られた音声であったことが、後にインタビューで明かされています。この時の展示ではなぜ未夢が関西弁を喋っているのか謎でしたが、自由に音律を制御し、会話の情感や歌うような喋り、方言のイントネーションなどを再現する事もできるというVOCALOID-flex技術のデモンストレーションでもあったためのようです。
YAMAHAによるVOCALOID開発の次の段階を見ることができる、最先端技術のつまった動画です。
「VOCALOIDの今後とVOCALOID3・「CEATEC JAPAN 2009」の新情報まとめ(雑記)」「喋り対応の新ボーカロイド技術「VOCALOID-flex」をYAMAHAが発表(雑記)」



 【miki】龍天に登る【オリジナル】
12月4日に発売された新ボーカロイド「SF-A2 開発コード miki」の作品です。
販売元はVOCALOID開発に新規参入した「AHS」社で、VOCALOID参入の第一報をメールマガジンに縦読みで仕込んだり、発売直前まで情報を伏せてクリスマス曲CD「VOCALOIDS☆X’mas」で初めてビジュアルや歌声を公開したり、最初からある程度のキャラクター付けをしたり、「開発コードmiki」「氷山キヨテル」「歌愛ユキ」とタイプの違う3種のボーカロイドを同時発売したりと、独特の方針で話題になりました。
mikiの声は元SUPERCARのボーカル「フルカワミキ」さんを元に作られていて、他の2種とは違う「アーティストエディション」第一弾ボーカロイドとして発売されました。声はリンとも似た可愛い高音で、比較的広い音域が特徴とされています。人気イラストレーター・コザキユースケさんデザインのメカっぽいキャラクターも人気で、発売直後の作品数も同時発売の3種の中では最も多く投稿されました。
しかし、音を外すクセやノイズなども強く、扱い易いボーカロイドではないようです。
この曲はBumpyうるし(やきいもP)さんによるmikiオリジナル曲で、投稿解禁となった4日の0時00分ぴったり(12秒差)に投稿されて、発売日最初の作品となりました。mikiのメカっぽいイメージに反して和風の民俗音楽風で、テクノポップ系が多かった初期miki曲の中では異色でしたが、注目を浴びた作品です。
→「SF-A2 開発コード miki」へ



 氷山キヨテルにオリジナル曲「jewelfish」を歌ってもらった
「Re:nG」さんによるキヨテルオリジナル曲で、発売日に投稿されたキヨテル曲で最も多く再生された作品です。
「ボカロ先生・氷山キヨテル」はAHS社から同時発売された3種のボーカロイドの一つで、高めで優しい歌声を持つ男声ボーカロイドです。「ボカロ先生」という名前や小学校教師という職業、「休日はロックバンドのアイスマウンテン・テルとして活動している」という設定など、最初からキャラクターに関する情報量が多くなっています。特にロックバンドの設定は初期の曲に大きく影響したようで、発売直後はこの曲を始めとしてキヨテルにロックを歌わせた作品が多く投稿されました。
AHS社の3種のボーカロイドは性能的にもどれも癖が強いですが、このキヨテルも滑舌に難があり、高音のパワーで優れる反面、低音に弱いという欠点を持ちます。
とはいえ、貴重な男声VOCALOID2であり、キャラクター的にも人気は低くないようです。
→「ボカロ先生・氷山キヨテル」へ



 【歌愛ユキ】シューティング☆スター【オリジナルグランプリ曲】
同時発売されたAHS社の新ボーカロイドの一つ「ボカロ小学生・歌愛ユキ」を使った動画です。曲はかごめPによるもので、元は「Jamバンドまつり作曲コンテスト」でグランプリを取った曲をユキに歌わせたものです。そのためセリフ部分はユキではなく、配布されているJamバンドキャラクターの音声素材が使われています。
「ボカロ小学生・歌愛ユキ」は3種のAHSボーカロイドの中でも最も個性的なボーカロイドで、歌手ではない素人の小学生の声を元に作られています。そのため歌声に力強さや伸びはなくクセも強いですが、リアルで素朴な女の子の歌声はこれまでのボーカロイドにはなかったもので、用途は限られるものの他では真似できない使い方ができる特化型のボーカロイドと言えます。発売直後には明るく可愛いロリ系のキャラクターソングが多く作られましたが、リアルでボソボソした声のため意外と暗い曲にも合うようです。
キャラクター的にはランドセルにお下げ髪といういかにもな小学生の女の子と言う感じで、「9歳の心優しい小学生で、担任は氷山キヨテル先生」という設定があります。
→「ボカロ小学生・歌愛ユキ」へ



 【初音ミクAppend_dark】 parabola 【オリジナルカバー曲】
2009年夏に正式に発表された初音ミク追加音声パック「初音ミク・アペンド」の体験版が12月に配布され、それを使った多くのユーザー作品がニコニコ動画でも発表されました。この「tac_」さんの作品もその一つで、アペンド音源の一つ「dark」を使って歌わせています。
「初音ミク・アペンド(MIKU Append)」は、複数の音声ライブラリを切り替える事で、ボーカロイドの欠点だった歌声の情感の変化を表現しようと言う新しい試みのボーカロイドで、「dark」「soft」「vivid」「sweet」「solid」「light」の6種類の音声ライブラリをミクに追加します。体験版が配布されたのは、アペンドの内「dark」と「soft」の二つで、特にこの曲でも使われている「dark」は、従来のミクでは表現できなった暗くリアルな歌声で評判になりました。
またこの動画は、後にAppendの他の音声ライブラリや鏡音リン・レンAppendの制作にも大きな影響を与えています。技術的な壁に行き当たり「solid」の開発が難航していた時期に、クリプトンのボーカロイド開発責任者「wat」さんがこの作品を聞いた事でまったく新しい方法を思いつき、すぐに「solid」を一から収録し直してついに完成の目処が立つまでの過程が公式Twitterで書き込まれています。その新方式によって、長く凍結していた「鏡音リン・レンAppend」の収録も再開されました。素人にはどんな発見だったのかわかりませんが、この曲がクリプトンのボーカロイド開発にブレイクスルーをもたらしたのは確かなようです。
「「初音ミク・アペンド」デモまとめ・その1 「dark」」



 「 神威がくぽ がオリジナル曲『 Episode.0 』を唄う」の巻
12月15日のニコニコ生放送で行われた「がくっぽいどコンテスト」の結果発表においてグランプリに選ばれた作品で、がくっぽいど最大のヒット曲「ダンシングサムライ」の作者として知られる「カニミソP」のがくぽオリジナル曲です。
「がくっぽいどコンテスト」は、ドワンゴの主催で行われたがくっぽいどオリジナル曲の賞金付きコンテストで、応募曲はがくっぽいどの声を担当したシンガーソングライター「GACKT」さんによって審査されて、選ばれた曲はGACKTさんがカバーしてCD化する可能性もあるというコンテストでした。ユーザー主導の創作文化であるボーカロイドジャンルにおいて企業主体の賞金付きコンテストという形式に当初は否定的な意見もありましたが、2009年6月10日~8月31日の募集期間中に255作品が応募しています。
GACKTさんは多忙の身でありながら審査にまったく手を抜かなかったようで、全ての曲を持ち帰って自分で聞きこみ、さらに応募作以外のがくっぽいど作品の傾向などもニコニコ動画で自発的にチェックするなどしていたようです。ボーカロイドの技術や意義についての理解も深く、プロのシンガーソングライターならではの解説を交えた受賞発表では、GACKTさんのプロ・アマ関係なく音楽に真摯に向き合う姿勢がボーカロイドファンにも強い印象を残しました。
この「がくっぽいどコンテスト」はインターネット社ボーカロイドのアーティスト路線ならではの企画であり、現在主流の「CVシリーズ」のコンセプトとは異なる「AVシリーズ」ならではの価値と可能性を示したコンテストだったと言えるかもしれません。
→「がくっぽいどコンテスト結果発表・GACKTさんが歌ってCD化も?(雑記)」、「がくっぽいどコンテスト結果発表・その2(雑記)」へ


2010/4/17更新
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テーマ : ボーカロイド ジャンル : 音楽

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