2008.11.17 (Mon)
ピコピコサウンドと終末の歌 ささくれUK作品
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進化を続けるVOCALOIDの技術的な最終目標は生身の歌手と聞き分けられないような歌声を自由に作り出すことだと思いますが、それとは違うもう一つの方向性として「人間とは違うボーカロイドの歌声ならではの魅力」を強調した作品も人気があります。ボーカロイドの機械的な味が生かせる音楽としてはテクノ系やアンビエントなどがありますが、古いゲームのピコピコサウンドを使う音楽ジャンル・チップチューンもボーカロイドと相性の良いジャンルの一つと言われています。そのチップチューンを得意とする作者の中で特に高い人気を持つのが、ミリオン持ちPの1人「sasakure.UK(ささくれP)」さんです。
その作品の特徴は、電子的なサウンドとボーカロイドによって歌われるリアルで奥の深い世界観にあり、音だけでなく歌詞と動画にも拘った物語性の強い作品を多く発表しています。中でも、終末を迎えた世界に1人取り残されたロボットの最後の冒険を描いた「*ハロー、プラネット。」は人気があり、チープなピコピコ音とボーカロイドの機械的な歌声を使うことによって、逆に物語の純粋さや悲しさが強く伝わってくる名作です。
ささくれPの作品ではPVも世界観を構築する重要な要素の一つとして自作されたものが多く、「ニジイロ*アドベンチュア」「*ハロー、プラネット。」などでは古いゲーム画面を思わせるドット絵も評判になりました。特に「*ハロー、プラネット。」はSEGAによって実際にゲーム化され、PSP「初音ミクProject DIVA」の追加楽曲集「ミクうた、おかわり」に収録されています。
ささくれPは、ボーカロイドを使ったチップチューンを得意とする作者として知られていますが、可愛くてどこか切ないポップス系作品や、宮沢賢治や手塚治虫の作品をモチーフとした曲なども作っていて、多彩です。
使用するボーカロイドもミク・リン・ルカ・メグッポイド・ミクAppendβなど様々で、特にメグッポイド使いとしては現在最大の再生数を持つトップPとなっています。ボーカロイドの他にもインスト曲や「歌ってみた」歌い手のための書き下ろし曲など「ニコニコインディーズ」に属する作品も投稿していて、ニコニコ動画以外ではDJやライブ活動なども積極的に行っています。
ささくれPは、元は音楽ゲーム「BMS」の人気作者で、ニコニコ動画の外での音楽歴も長いベテランです。CD発売に合わせて行われたインタビューでは「ボーカロイドだからこそ最大限に表現できる作品」を意識している事が語られていて、中でも世界の終末とその後を描いた一連のシリーズ「ワンダーラスト」「*ハロー、プラネット。」(「*サヨナラ、ワールドエンド。」)ではそれが強く出ているようです。
メジャー販売されたCDとしては、2010年3月3日に発売されたCD&DVDアルバム「ボーカロイドは終末鳥の夢を見るか?」があります。CD用にリメイクされた曲やニコニコ動画では未発表の新曲もあり、曲順や全体的な構成で強く物語性を感じさせるアルバムになっています。逆衝動PによるリミックスやブラザーPのアニメーションPVも収録し、非常に凝ったブックレットや発売前のミクAppendを使用した楽曲など、見所の多いCDです。
【初音ミクオリジナル曲】*ハロー、プラネット。【ドットPV付き】
ささくれP本人によるドット絵PVには世界観に関わる様々な情報が込められていて、画面左上のスコアの数字にも意味を持たせてあるようです。(スコアについてはニコニコ大百科へ)
【めぐっぽいどオリジナル曲】ぼくらの16bit戦争【PV付き】
現在GUMIオリジナル曲の中で最高の再生数を持つ作品で、メグッポイドの代表曲と言えます。発売時物議をかもしたゴーグルを有効に使ったワイルドで凛々しいアーミースタイルGUMIや、せわしなく変化する変拍子が独特です。
【巡音ルカオリジナル曲】ワンダーラスト【手描きPV付き】
「*ハロー、プラネット。」の前作に当たり、共通の世界観を持つ作品です。
【めぐっぽいどオリジナル曲】カムパネルラ【PV】
宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」をモチーフにしています。
【初音ミクオリジナル曲】ニジイロ*アドベンチュア【手描きPV付き】
【初音ミクdark(+巡音ルカ)オリジナル曲】ウタカタ永焔鳥【PV】
発売前のMIKU Append「dark」を使用しています。手塚治虫の漫画「火の鳥」シリーズをモチーフにしていて、歌詞の中に「手塚治虫」の文字が隠されています。

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