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2008.01.20 (Sun)

名作で見るボーカロイドの歴史11

2009年の6~8月は、前年の静かな夏とは異なりボーカロイドジャンルにとって話題が多い時期となりました。
ボーカロイド楽曲が次々とメジャーCD化され、クリプトンによる新型初音ミクの存在も徐々に公開される中、リアルな歌声を持つ新ボーカロイド「メグッポイド」の発売、初音ミク初のゲーム化「初音ミク-ProjectDIVA-」の大ヒット、初音ミク初のライブ出演と「ブラック★ロックシューター」アニメ化の決定など、大きな出来事が立て続けに起こっています。どれもニコニコ動画の外にも広く報じられたニュースで、特に「初音ミク-ProjectDIVA-」のヒットは新たなボーカロイドファンの獲得に大きく貢献すると共に、新しい初音ミクの「顔」ともいえるDIVAモデルを生み出しました。
また、この時期には風刺動画「白いクスリ」を巡っての議論が起こり、一部のコミュニティを騒がせています。ジャンルへの大きな影響はありませんでしたが、ボーカロイドと初音ミクが、ニコニコ動画の外からもある程度注目されるジャンルになっている事が解る出来事。と言えるかもしれません。




 メグッポイド「メグメグ☆ファイアーエンドレスナイト」【オリジナル】
メグッポイド発売日当日に投稿された作品で、一番最初に殿堂入りしたGUMIオリジナル曲です。
インターネット社の第二弾ボーカロイド「メグッポイド」は、ニコニコ動画でも当時人気の高かったアニメマクロスFのヒロイン「ランカ・リー」役の中島愛さんの声から作られ、パッケージイラストにはベテラン漫画家「ゆうきまさみ」さんを起用してそのデザインが賛否両論を呼んだりと、発売前から大きな話題となっています。公式デモがニコニコニュースで大々的に宣伝されたり、発売に先行して時報に採用されたりと、ニコニコ動画と連携したプロモーションも盛んに行われました。
そんな中で迎えたメグッポイド発売と「GUMI祭り」では、がくっぽいど発売時と比べても多くの作品が投稿されて、人気曲も生まれました。特に、この「メグメグ☆ファイアーエンドレスナイト」と、とくPの
blue bird」、少し遅れて投稿されたささくれPの「ぼくらの16bit戦争」の3曲に人気が集まり、ほぼ同じ再生数で人気を分けています。
とはいえ、やはりCVシリーズほどの祭りにはならず、特にネタや持ち物方面では盛り上がりきらなかったため、キャラクターの定着にはいたりませんでした。
この曲は多彩なボーカロイドと曲調を使いこなす古参P「samfree」さんの作品で、他にもルカの「ルカルカ★ナイトフィーバー」、mikiの「ミキミキ★ロマンティックナイト」など、キャラクター名をタイトルにしたノリのいいユーロビートを作っています。このシリーズは「歌ってみた」でも人気が高く、新ボーカロイド発売祭りでの恒例シリーズとなりました。
→「がくぽの妹・GUMI」へ



 メグッポイドで Miracle∞Gumiracle 【東方vocalカバー】
神調教職人ハロPによる東方VOCALOID作品で、原曲はIOSYSさんの「東方想幽森雛」収録曲「Miracle∞Hinacle」です。メグッポイドのリアルな歌声にハロPならではの神調教が加わり、その高性能をジャンルを超えて広く知らしめた名カバー作品です。
メグッポイドは声を担当した声優・歌手「中島愛」さんの歌声をリアルに再現するように調整されたボーカロイドで、滑舌に多少難があり扱いにはコツが必要なものの、使いこなす事ができれば今までの女声ボーカロイドの中で最も生々しくリアルな歌声を作り出す事ができます。「人の歌声に近付く」という部分で非常に高い性能を持っている反面、歌声に中の人のイメージが強く出てしまい、キャラクターとしての人気はまだそれほど高くありません。歌声自体にもがくっぽいどのようなアクは無く素直ですが、その分無個性で印象に残り難い声と言われることもあるようです。
そのためかメグッポイドではカバー曲が評価される事が多く、この曲や「Bad Apple!!」「君の知らない物語」のような神調教カバー作品に人気が出る傾向があるようです。
声のリアルさと癖のなさから、プロによるボーカロイドの用途の一つである「仮歌歌手」としての使用に最も適したボーカロイドかもしれません。



【ProjectDIVAエディット】恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-【初音ミク】
初音ミク初のゲーム化作品「初音ミク-ProjectDIVA-」のエディット機能で作られた作品で、OSTER projectさんの名曲を下手に歌うミクを再現した「恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-」のDIVA-PVです。
2009年7月2日にSEGAから発売されたPSPゲーム「初音ミク-ProjectDIVA-」(公式サイト)は、ボーカロイドの人気楽曲を生かしたリズムアクションゲームで、当初の予想を大きく超えて発売初週10万本を売り上げるヒットとなりました。
SEGAの拘りによってボーカロイドジャンル特有の創作文化を強く意識した作りになっているのが特徴で、イメージの固定化を招きかねないストーリーモードを開発途中でばっさりカットし、好きなMP3が使える自由度の高いエディットモードを充実させ、ピアプロコラボやニコニコ動画で公募したユーザー作品をゲームに多く取り入れるなど、他のリズムゲームやキャラクターゲームとはかなり違ったシステムになっています。その結果完成したゲームはボーカロイドファンからの評価も高く、SEGAや音ゲー繋がりでプレイした新規層からも好評で多くの新しいボーカロイドファンが生まれる事になりました。
また、ゲームで使われた精巧な3Dモデルは、後にPS3HOMEのバーチャルライブや、献血ルーム「akiba:F」、バーチャルアイドルによる擬似立体映像ライブとして話題になったミクFesや、アニメロサマーライブ、シンガポールで行われたアニメフェスティバルのライブイベントなど、商業イベントには欠かせない3Dミクモデルの標準の一つとなりました。
ただゲームとしてヒットしたというだけでなく、大きな影響をボーカロイドジャンルに与えた作品です。



【UTAUで】けんか別れ【連続音音源を検証】
UTAUの連続音音源「桃音モモ」を使用したカバー作品で、オリジナルは「最古のUTAUオリジナル曲」と言われる耳ロボPのデフォ子曲です。
VOCALOIDと似た機能を持つフリーの歌声合成ソフト「UTAU」は、ボーカロイドと比べると音の繋がりが不自然で機械っぽさが消せないという欠点がありましたが、この作品では多少癖が残っているもののそれまでと比べると格段に自然で、VOCALOIDにも近いレベルの歌声になっています。
この動画で初めて紹介されたUTAUの新技術「連続音」は、単音ではなく複数の音声要素を持つ連続音を収録して使用する方法で、大変な手間のかかる専用ライブラリの収録が必要になるものの、音の繋がりをかなり自然にすることができます。これによりUTAUは一段進化した歌声を手に入れ、元々加工が少ない分生音に近い事もあり「レリクス」「恋愛サーキュレーション」ような神調教作品もいくつか生まれています。
連続音音源さえ使えば誰でも神調教レベルのものが作れるというわけではないようですが、UTAUの技術が大きく発展して新しい段階に入った事を知らせた名作動画です。
→「無料ボーカロイド? UTAUファミリー」へ



【碧いうさぎ替え歌】白いクスリ【初音ミク】
「白いクスリ騒動」のきっかけとなった動画で、タレント・酒井法子さんの人気曲「碧いうさぎ」の替え歌です。元動画は削除されているので、これはYouTubeに転載されたものです。替え歌の内容は、覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕された酒井法子容疑者を風刺したもので、当時非常に注目度が高いニュースだった事もあり、この動画も大きな話題となりました。
派生動画も多く作られて、ネットニュースやTV、挙句は海外のニュースでまで酒井法子容疑者逮捕と絡めて放送された作品で、クリプトンにも取材要請が殺到した事からニコニコ動画に「白いクスリ」の権利者削除を申請。それを受けてニコニコ動画を運営するニワンゴが動画を削除します。その後、インターネット社も自社製VOCALOIDで作られた関連動画を削除申請しています。
利用規約に従った削除要請自体は前例のあることで、動画削除も時事風刺動画ではお決まりのパターンですが、なぜかニワンゴ取締役であるひろゆき氏がブログでクリプトン批判を展開し、ニワンゴが対応を二転三転させたため部外者も巻き込んだ議論に発展。クリプトン・インターネットがYAMAHAと共同で削除要請の理由を改めて発表する事態になります。(時系列はこのサイトのまとめが詳しいです)
かなり大雑把に言えば「クリプトン(とインターネット)の削除申請は利用規約の面でも製品に対する悪評を避けユーザーを守るという意味でも当然」という立場と「メーカーの判断でVOCALOIDの利用方を縛られるのは自由な表現を妨げられる事になり望ましくない」という立場による議論ですが、本題から脱線した言い合いや、騒動を利用したバッシングや煽りなども多く見られました。
全体としてはクリプトン・インターネット・YAMAHAの主張は一貫して変わらず、ニワンゴは前言を翻したりクリプトンとインターネット社で対応を変えたりとちぐはぐな印象を受けました。さらに、事態を把握していなかったり違う動画(表現をソフトに改変したMMD版など)と取り違えた部外者(ひろゆき氏含む)による議論が無駄に混乱を拡大させた面もあったようです。動画の作者も騒動が大きくなったことを謝罪して一時自分の全作品を非表示にしていましたが、後に元に戻しています。
今回に限り騒動が大きくなった理由については人によって様々な意見があるかと思いますが、初音ミクとボーカロイドを取り巻く文化が内輪だけのものではなくなり、良くも悪くも外から注目されるようになったからこその顛末だったと言えます。



【MikuFes09】HatsuneMiku-Hajimeteno_Koi_ga_Owarutoki【ミクフェス/ミクFES】
初音ミク発売2周年を記念して行われた「ミクFES'09(夏)」の一部を切り出した動画です。
このライブはryo、kz、デッドボールP、OSTER project、doriko、19's Sound Factory、ika&MOSAIC.WAV、bakerなど豪華なP達が出演して初音ミクの人気曲を演奏するもので、ニコニコ動画の有料生放送でも中継された他、「バーチャルアイドルによる単独ライブ」としてネットニュースなどで取り上げられました。
特に、大スクリーンに映される方式だったアニサマと違って、透過スクリーンによる擬似立体映像で3Dミクがステージ上で歌い踊る映像は非常にインパクトがあり、「シャロン・アップル」や「時祭イブ」などSFに登場するバーチャルアイドルの実現として語られることも多かったようです。(実際に会場で見ると、動画で見るほどは立体には見えないのではないかという感想もありましたが)
この3DミクはPSP用のDIVAモデルを高解像度で作り直したもので、他にも多くのイベントやコラボ企画で使用されています。ニコニコ動画に上げられたメイキング動画によれば、3D格闘ゲーム「バーチャファイター」用に開発された技術なども応用されているそうで、SEGAならではの技術によって実現したライブと言えます。
→「ミクFES'09(夏)の動画と感想(雑記)」へ


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テーマ : ボーカロイド ジャンル : 音楽

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