2008.01.08 (Tue)
名作で見る初音ミクの歴史4
11月の終盤から12月初めにかけては、初音ミクとボーカロイドにとって激動の日々でした。
この時期に起こったさまざまな出来事は、これまでの初音ミクのブームの形を変化させ、現在に続く多くのことがこの時に定まりました。
ここからはもう「ミクの歴史」ではなく、「ボーカロイド(ボカロ)の歴史」になって行きます。
最初の変化は、初音ミク人気の高まりによって、ミク以外のボーカロイド達も注目を浴びるようになった事でした。ミクの添え物やバックコーラスとしてではなく、MEIKOやKAITO独自の性能や調教法が見直され、個性とファンを獲得していく事になります。これによって、ミクの声が苦手な人や女性層などもボーカロイドの曲を聴くようになりました。
次に、記録的な大ヒット曲「メルト」の発表が、初音ミクブームに劇的な変化をもたらしました。他分野とのコラボの増加やファン層の変化などによって、ニコニコ動画におけるボーカロイドは、より開かれたジャンルになっていきます。
そして、「みくみくにしてあげる♪」がJASRAC登録曲となっていたのが判明した事から始まった「みくみく事件」によって、初音ミク楽曲の商品化の枠組みと著作権についての大議論が起こります。これをきっかけとして、素人が自由に自作曲を発表するシステム作りのために、クリプトンとボーカロイド作品作者達による新しい試みが始まることになったのです。
忘却心中(オリジナル曲)/Vocaloid-MEIKO
一番最初にVOCALOIDランキングでランクインしたMEIKOオリジナル曲です。
初音ミク発売以前にも自作の曲をMEIKOに歌わせているDTM愛好家はいましたが、MEIKOどころかVOCALOIDの技術自体に知名度がほとんどなかったため、一般には目立たない存在でした。
しかし、初音ミク発売間もないころから、ワンカップPやぼか主の作品などによりMEIKOのキャラクターや歌声がミクファンの間で定着し始め、この忘却心中や「めいこめいこにしてあげる」などがランクインするようになりました。
ただ、この時点ではまだ大ヒット曲は無く、殿堂入りは「PASSIONAIRE」が発表されるまで待つことになります。
この曲はニコニコ動画が初出ではなく、作者のOPAさんが初音ミク発売より以前にDTMサイトに投稿していた作品です。MEIKOのための曲というわけではないのですが、ミクの苦手な大人っぽいロックもMEIKOだとはまっています。
→「ミクのお姉さん・MEIKO」へ
「卑怯戦隊うろたんだー」をKAITO,MEIKO,初音ミクにry【オリジナル】修正版
KAITOの出世作にして、最大のヒット曲です。ミクの代表曲「みくみくにしてあげる」「メルト」に次いでボーカロイド曲の中で三番目に再生数が多く、KAITOを象徴する代表曲と言えます。
DTM音源としてはそれなりにヒット商品だったMEIKOと違って、KAITOは元々ほとんど売れていないソフトでした。開発者や名付け親に「失敗作」と言われたエピソードもあり、初音ミクブーム初期はその影の薄さがよくネタにされていたほどです。(「消えゆくあなたへ(通常版)」、「うp主が倒せない(再)」)
しかし、「キミと出逢ってから」などで真面目な歌声も徐々に評価されるようになり、「KAITO良曲メドレー」で取り上げられた事をきっかけに、この「うろたんだー」が大ヒットしました。とはいえ、この時点ではまだネタキャラとしての人気で、まじめな曲やオリジナル曲で評価されるのは2008年に入ってからの事になります。
架空の戦隊ヒーロー番組の主題歌という設定のこの曲は、調教のレベルもネタとしても秀逸な作品なのですが、多くの二次制作を生み出した事も特徴です。この曲のファンによって多数のイラストや物語設定、敵対組織や劇中キャラクターが作られていき、それらをまとめる専用サイトも作られました。
この曲のヒット以降KAITOの存在感は増し、MEIKOを凌ぐほどになっていきます。
→「ミクのお兄さん・KAITO」へ
初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」
「みくみくにしてあげる♪」に次ぐ再生数を持つ初音ミクの代表曲の一つで、ブームの新しい流れを作り出すきっかけとなった曲です。
少女の視点で可愛い恋を歌った作品で、奇をてらわない正統派の調教と美麗なイラスト、ピアノに特徴のあるバンドサウンド、キャラクターとしてのミクが登場しない、少女の一人称視点で語られるストレートな恋愛の歌詞という、後に大ヒットを連発する作者ryoさんの特徴的要素がこの曲にも詰まっています。
この曲は発表後、単独でも上位にランクインしていたのですが、インディーズ歌手であるhalyosyさんが男性版に歌詞をアレンジして歌った事で大きな話題となります。
さらに、それを別の人がミクとのデュエットバージョンとして編集した動画が登場し、また、自演騒動などで活動を自粛する傾向にあった「歌ってみた」ジャンルの歌手達が次々とカバーしてそれがまた大人気となりました。これらが短期間に一気に行われたため、一時ニコニコ動画のランキング上位が全て同じサムネイルのメルト関連動画で埋め尽くされ、通称「メルトショック」と呼ばれる大騒ぎに発展します。
この出来事は、新規ファンの急激な増加やニコニコ歌手・楽器演奏者の「ボーカロイドオリジナル曲」への本格的な参入のきっかけとなりましたが、旧来のボーカロイドファンや、ボーカロイドと距離を置くニコニコ動画視聴者との間に摩擦も生まれました。そして様々な議論とルールが生まれ、結果的に
ニコニコ動画でのボーカロイドは、最も間口が広く、他分野とのコラボを受け入れるジャンルの一つになっていったのです。
その変化をもたらした発端となったこの曲も派生作品が非常に多く、歌ってみた、演奏してみた、それらをまとめた合唱動画、踊ってみた、替え歌、手書きPV、3DPV、アイドルマスターのダンスPV、ネタ化したパロディ作品など、タグで検索すると4000以上に及ぶ派生作品が見つかります。さらに、カラオケ化やCD化、有線放送で流れたりと、ニコニコ動画に留まらない広がり方をしているようです。
→「ラブソングの大ヒットメーカー ryo作品」、「ボカロオリジナルを歌って踊って演奏してみた」へ
【鏡音リン・レン】 ロードローラー支援動画 【WRYYYYYYYN!!!】
この時期におきたボーカロイドにとって重要な出来事の一つに、クリプトンが運営するコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」の開設があります。(12月3日)
ピアプロは、オリジナルの楽曲・歌詞・イラストをバラバラに投稿して貯えていて、利用者はルールに従って、ほぼ自由にそれを自分の作品に使用する事ができます。著作権や作者との交渉を気にせずに創作物を素材として利用する事ができ、ニコニコ動画などで発表する事もできるようになるのです。
発売元運営による、従来にない二次創作の推奨システムと言えます。
それまでは、パッケージイラスト一枚が静止画で表示されるだけの作品が主流でしたが、ピアプロの利用が進んでからは、曲に合った様々なイラストを使ったイラストPV付き作品が多くなりました。
この動画は、最も初期に本格的にピアプロを利用した動画の一つで、オリジナル曲と多数のイラストは動画編集者とは別の作者が作ったものです。
そして、「すいません・・・、鏡音リンを予約したいのですが・・・」から始まって、ピアプロとニコニコ動画を巻き込んで盛り上がった「ロードローラー祭り」の先駆けとなった動画の一つでもあります。
【初音ミクオリジナル曲】みんなのために
12月におきた様々な騒動の極めつけとなったのが、通称「みくみく事件」と呼ばれる一連の出来事でした。
騒動は、12月17日に「みくみくにしてあげる♪」がJASRAC(日本音楽著作権協会)管理曲として登録されている事が報告された事から始まりました。JASRACに登録されるという事は、今後「みくみくにしてあげる♪」を無断で使用したり演奏したり替え歌を作ったりアレンジしたりPVを作ったりといったニコニコ動画での初音ミクブームを支えてきた活動の全てができなくなる事が予想され、大きな反発を呼びました。
さらに、初音ミク楽曲の着うたを独占配信するとドワンゴ(ニコニコ動画を運営するニワンゴの親会社)が発表。しかし、作者に無許可で楽曲を配信したり、全ての曲を事後承諾でJASRACに登録しようとしていた事が作者達の告発によって明らかになります。
騒ぎは大きくなり、ピアプロの開設などユーザーの自由な創作を尊重する方針を掲げていたクリプトン社も抗議の文章を発表して、ドワンゴとの意見の対立が表面化。間に入っている権利代行会社との意思疎通の不備もあり、お互いに自社のブログなどで反論し合うという、泥沼の事態になってしまいます。(解説動画、まとめwiki)
この曲はそんな最中発表されたもので、ドワンゴやJASRACを激しく非難したり皮肉ったりする動画が数多く投稿される中、権利ビジネスの都合に翻弄されるミクの悲しみと願いを静かに歌ったオリジナル曲です。この作者さんは、「消えた初音ミク騒動」のときにもオリジナル曲「どうか…」を発表しています。
そして、2ch管理人にしてニワンゴの取締役であるひろゆき氏も、この件について議論する掲示板に現れて鎮静化(?)を図り、なぜかミク曲「初音ミクで季節モノの曲を作ってみたよ。 @ひろゆき」を作って投稿しています。
結局この件は、両社が音楽著作権の新しいルールを協力して構築していくという共同コメントを出して終結します。この騒動をきっかけに、以降ほとんどの初音ミク楽曲は、これまでの音楽業界の常識に囚われることなくJASRAC登録せずに販売・配信されるのが通例となり、現在までにJASRAC登録されているオリジナルの初音ミク楽曲はごく少数しかありません。
しかし、発端となった「みくみくにしてあげる♪」は、このブログにも設置されている「フルみっくすプレーヤー」からも除外されたままで、復活する事はないのです。
【初音ミク】melody...3D PV ver1.50
初音ミクの優れた曲には、別の作者の作ったPV動画や派生作品が作られる事がよくあります。
作曲されたオリジナル曲に映像の技術を持つ有志によって自由にPVが作られ、総合作品として更に評価されるのはニコニコ動画ならではの創作活動です。
この動画も、原曲「melody」の作者、「キオ式3Dミク」の作者、そしてPV動画作者による、ニコニコ動画ならではのコラボレーションで完成した名作PVです。この作品が、フリーで配布されていた「キオ式」モデルの人気を一気に高めることになりました。
この精巧なキオ式モデルにはファンが多く、初心者向けの安価な3Dソフトである「六角大王」があれば誰でもこのモデルを使えますが、複雑なアニメーション作りに向いていないため動きがあまりつけれられないのが欠点です。しかし、この作品ではミクの切れのあるポージングとカメラワークでそれを補っています。
このPVの作者「ussyP」は、3D動画はほとんど初心者同然だったためネットで勉強しながらコツコツと作り上げたそうで、その製作過程も動画として公開されています。
それまでブームを支えてきた多くのミク作品が翼となって展開する場面は神々しいほどで、発売日が近付いていた新型ボーカロイド「鏡音リン・レン」に未来を託して機能停止するラストは、初音ミクだけのブームが終わりを迎え、新しいボーカロイドブームが始まる事を告げているようでもあります。
続編も作られました。
←押してもらえると励みになりますm(_ _)m
この時期に起こったさまざまな出来事は、これまでの初音ミクのブームの形を変化させ、現在に続く多くのことがこの時に定まりました。
ここからはもう「ミクの歴史」ではなく、「ボーカロイド(ボカロ)の歴史」になって行きます。
最初の変化は、初音ミク人気の高まりによって、ミク以外のボーカロイド達も注目を浴びるようになった事でした。ミクの添え物やバックコーラスとしてではなく、MEIKOやKAITO独自の性能や調教法が見直され、個性とファンを獲得していく事になります。これによって、ミクの声が苦手な人や女性層などもボーカロイドの曲を聴くようになりました。
次に、記録的な大ヒット曲「メルト」の発表が、初音ミクブームに劇的な変化をもたらしました。他分野とのコラボの増加やファン層の変化などによって、ニコニコ動画におけるボーカロイドは、より開かれたジャンルになっていきます。
そして、「みくみくにしてあげる♪」がJASRAC登録曲となっていたのが判明した事から始まった「みくみく事件」によって、初音ミク楽曲の商品化の枠組みと著作権についての大議論が起こります。これをきっかけとして、素人が自由に自作曲を発表するシステム作りのために、クリプトンとボーカロイド作品作者達による新しい試みが始まることになったのです。
忘却心中(オリジナル曲)/Vocaloid-MEIKO
一番最初にVOCALOIDランキングでランクインしたMEIKOオリジナル曲です。
初音ミク発売以前にも自作の曲をMEIKOに歌わせているDTM愛好家はいましたが、MEIKOどころかVOCALOIDの技術自体に知名度がほとんどなかったため、一般には目立たない存在でした。
しかし、初音ミク発売間もないころから、ワンカップPやぼか主の作品などによりMEIKOのキャラクターや歌声がミクファンの間で定着し始め、この忘却心中や「めいこめいこにしてあげる」などがランクインするようになりました。
ただ、この時点ではまだ大ヒット曲は無く、殿堂入りは「PASSIONAIRE」が発表されるまで待つことになります。
この曲はニコニコ動画が初出ではなく、作者のOPAさんが初音ミク発売より以前にDTMサイトに投稿していた作品です。MEIKOのための曲というわけではないのですが、ミクの苦手な大人っぽいロックもMEIKOだとはまっています。
→「ミクのお姉さん・MEIKO」へ
「卑怯戦隊うろたんだー」をKAITO,MEIKO,初音ミクにry【オリジナル】修正版
KAITOの出世作にして、最大のヒット曲です。ミクの代表曲「みくみくにしてあげる」「メルト」に次いでボーカロイド曲の中で三番目に再生数が多く、KAITOを象徴する代表曲と言えます。
DTM音源としてはそれなりにヒット商品だったMEIKOと違って、KAITOは元々ほとんど売れていないソフトでした。開発者や名付け親に「失敗作」と言われたエピソードもあり、初音ミクブーム初期はその影の薄さがよくネタにされていたほどです。(「消えゆくあなたへ(通常版)」、「うp主が倒せない(再)」)
しかし、「キミと出逢ってから」などで真面目な歌声も徐々に評価されるようになり、「KAITO良曲メドレー」で取り上げられた事をきっかけに、この「うろたんだー」が大ヒットしました。とはいえ、この時点ではまだネタキャラとしての人気で、まじめな曲やオリジナル曲で評価されるのは2008年に入ってからの事になります。
架空の戦隊ヒーロー番組の主題歌という設定のこの曲は、調教のレベルもネタとしても秀逸な作品なのですが、多くの二次制作を生み出した事も特徴です。この曲のファンによって多数のイラストや物語設定、敵対組織や劇中キャラクターが作られていき、それらをまとめる専用サイトも作られました。
この曲のヒット以降KAITOの存在感は増し、MEIKOを凌ぐほどになっていきます。
→「ミクのお兄さん・KAITO」へ
初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」
「みくみくにしてあげる♪」に次ぐ再生数を持つ初音ミクの代表曲の一つで、ブームの新しい流れを作り出すきっかけとなった曲です。
少女の視点で可愛い恋を歌った作品で、奇をてらわない正統派の調教と美麗なイラスト、ピアノに特徴のあるバンドサウンド、キャラクターとしてのミクが登場しない、少女の一人称視点で語られるストレートな恋愛の歌詞という、後に大ヒットを連発する作者ryoさんの特徴的要素がこの曲にも詰まっています。
この曲は発表後、単独でも上位にランクインしていたのですが、インディーズ歌手であるhalyosyさんが男性版に歌詞をアレンジして歌った事で大きな話題となります。
さらに、それを別の人がミクとのデュエットバージョンとして編集した動画が登場し、また、自演騒動などで活動を自粛する傾向にあった「歌ってみた」ジャンルの歌手達が次々とカバーしてそれがまた大人気となりました。これらが短期間に一気に行われたため、一時ニコニコ動画のランキング上位が全て同じサムネイルのメルト関連動画で埋め尽くされ、通称「メルトショック」と呼ばれる大騒ぎに発展します。
この出来事は、新規ファンの急激な増加やニコニコ歌手・楽器演奏者の「ボーカロイドオリジナル曲」への本格的な参入のきっかけとなりましたが、旧来のボーカロイドファンや、ボーカロイドと距離を置くニコニコ動画視聴者との間に摩擦も生まれました。そして様々な議論とルールが生まれ、結果的に
ニコニコ動画でのボーカロイドは、最も間口が広く、他分野とのコラボを受け入れるジャンルの一つになっていったのです。
その変化をもたらした発端となったこの曲も派生作品が非常に多く、歌ってみた、演奏してみた、それらをまとめた合唱動画、踊ってみた、替え歌、手書きPV、3DPV、アイドルマスターのダンスPV、ネタ化したパロディ作品など、タグで検索すると4000以上に及ぶ派生作品が見つかります。さらに、カラオケ化やCD化、有線放送で流れたりと、ニコニコ動画に留まらない広がり方をしているようです。
→「ラブソングの大ヒットメーカー ryo作品」、「ボカロオリジナルを歌って踊って演奏してみた」へ
【鏡音リン・レン】 ロードローラー支援動画 【WRYYYYYYYN!!!】
この時期におきたボーカロイドにとって重要な出来事の一つに、クリプトンが運営するコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」の開設があります。(12月3日)
ピアプロは、オリジナルの楽曲・歌詞・イラストをバラバラに投稿して貯えていて、利用者はルールに従って、ほぼ自由にそれを自分の作品に使用する事ができます。著作権や作者との交渉を気にせずに創作物を素材として利用する事ができ、ニコニコ動画などで発表する事もできるようになるのです。
発売元運営による、従来にない二次創作の推奨システムと言えます。
それまでは、パッケージイラスト一枚が静止画で表示されるだけの作品が主流でしたが、ピアプロの利用が進んでからは、曲に合った様々なイラストを使ったイラストPV付き作品が多くなりました。
この動画は、最も初期に本格的にピアプロを利用した動画の一つで、オリジナル曲と多数のイラストは動画編集者とは別の作者が作ったものです。
そして、「すいません・・・、鏡音リンを予約したいのですが・・・」から始まって、ピアプロとニコニコ動画を巻き込んで盛り上がった「ロードローラー祭り」の先駆けとなった動画の一つでもあります。
【初音ミクオリジナル曲】みんなのために
12月におきた様々な騒動の極めつけとなったのが、通称「みくみく事件」と呼ばれる一連の出来事でした。
騒動は、12月17日に「みくみくにしてあげる♪」がJASRAC(日本音楽著作権協会)管理曲として登録されている事が報告された事から始まりました。JASRACに登録されるという事は、今後「みくみくにしてあげる♪」を無断で使用したり演奏したり替え歌を作ったりアレンジしたりPVを作ったりといったニコニコ動画での初音ミクブームを支えてきた活動の全てができなくなる事が予想され、大きな反発を呼びました。
さらに、初音ミク楽曲の着うたを独占配信するとドワンゴ(ニコニコ動画を運営するニワンゴの親会社)が発表。しかし、作者に無許可で楽曲を配信したり、全ての曲を事後承諾でJASRACに登録しようとしていた事が作者達の告発によって明らかになります。
騒ぎは大きくなり、ピアプロの開設などユーザーの自由な創作を尊重する方針を掲げていたクリプトン社も抗議の文章を発表して、ドワンゴとの意見の対立が表面化。間に入っている権利代行会社との意思疎通の不備もあり、お互いに自社のブログなどで反論し合うという、泥沼の事態になってしまいます。(解説動画、まとめwiki)
この曲はそんな最中発表されたもので、ドワンゴやJASRACを激しく非難したり皮肉ったりする動画が数多く投稿される中、権利ビジネスの都合に翻弄されるミクの悲しみと願いを静かに歌ったオリジナル曲です。この作者さんは、「消えた初音ミク騒動」のときにもオリジナル曲「どうか…」を発表しています。
そして、2ch管理人にしてニワンゴの取締役であるひろゆき氏も、この件について議論する掲示板に現れて鎮静化(?)を図り、なぜかミク曲「初音ミクで季節モノの曲を作ってみたよ。 @ひろゆき」を作って投稿しています。
結局この件は、両社が音楽著作権の新しいルールを協力して構築していくという共同コメントを出して終結します。この騒動をきっかけに、以降ほとんどの初音ミク楽曲は、これまでの音楽業界の常識に囚われることなくJASRAC登録せずに販売・配信されるのが通例となり、現在までにJASRAC登録されているオリジナルの初音ミク楽曲はごく少数しかありません。
しかし、発端となった「みくみくにしてあげる♪」は、このブログにも設置されている「フルみっくすプレーヤー」からも除外されたままで、復活する事はないのです。
【初音ミク】melody...3D PV ver1.50
初音ミクの優れた曲には、別の作者の作ったPV動画や派生作品が作られる事がよくあります。
作曲されたオリジナル曲に映像の技術を持つ有志によって自由にPVが作られ、総合作品として更に評価されるのはニコニコ動画ならではの創作活動です。
この動画も、原曲「melody」の作者、「キオ式3Dミク」の作者、そしてPV動画作者による、ニコニコ動画ならではのコラボレーションで完成した名作PVです。この作品が、フリーで配布されていた「キオ式」モデルの人気を一気に高めることになりました。
この精巧なキオ式モデルにはファンが多く、初心者向けの安価な3Dソフトである「六角大王」があれば誰でもこのモデルを使えますが、複雑なアニメーション作りに向いていないため動きがあまりつけれられないのが欠点です。しかし、この作品ではミクの切れのあるポージングとカメラワークでそれを補っています。
このPVの作者「ussyP」は、3D動画はほとんど初心者同然だったためネットで勉強しながらコツコツと作り上げたそうで、その製作過程も動画として公開されています。
それまでブームを支えてきた多くのミク作品が翼となって展開する場面は神々しいほどで、発売日が近付いていた新型ボーカロイド「鏡音リン・レン」に未来を託して機能停止するラストは、初音ミクだけのブームが終わりを迎え、新しいボーカロイドブームが始まる事を告げているようでもあります。
続編も作られました。

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JASRACのみくみく事件では、Innocenceの方が思い出に残っています。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1811770
あと、同時期に発表された「ハト」ですね。
直接の関連はありませんが、アップテンポで癒されました。
原曲は消えてしまっていますので、MMDの方を...
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2583719