2008.01.18 (Fri)

名作で見るボーカロイドの歴史10

年始のルカ祭りはニコニコ動画内のボーカロイドジャンルを大きく盛り上げましたが、2009年春は、ニコニコ動画の外でいくつかの重要な出来事が起こりました。
特に3~4月にかけては、ニコニコ動画の外へボーカロイドブームを広げるいくつかのニュースと、VOCALOIDの用途を広げる新技術の発表が大きなトピックとなっています。
ブームの広がりとしては、ryoさんのアルバム「supercell」発売に伴うソニーの大々的なプロモーションと「supercell」のヒットが、ニコニコ以外での「初音ミク」の知名度を押し上げる事になりました。このヒットを皮切りに2009年はボーカロイド系メジャーCDの発売ラッシュとなり、それらが連続でオリコン入りしてCDショップで専用コーナーが作られるなど、非ネット層への浸透と言う意味でも大きな流れを作り出しました。
技術面では、YAMAHAの開発した新技術「NetVOCALOID」と、それを利用したサービスが公開されています。特に、産総研も開発に関わり一年前の「ぼかりす」発表の日に合わせて公開された「Netぼかりす」は、職人の技術とぼかりすの自動システムが融合した新しい段階をファンに見せました。
どちらも、ボーカロイドの未来の展開に大きく影響すると思われる出来事です。




 supercell (ryo feat Hatsune Miku) Melt メルト PV (animated version)
ヒットメーカーryo&supercell初メジャーアルバム「supercell」のソニー公式プロモーションPVです。
前半は漫画家・三輪士郎氏による一枚絵を使ったものですが、終盤ではそのイラストを元にした「GONZO」による本格的なアニメーションシーンがあり、ソニーの本気度が伺えるPVになっています。
この「supercell」は、ボーカロイド作者として最も人気のあるryoさん初のメジャーアルバムと言う事で、今後のボーカロイドCDの売れ行きを占う意味でも注目されたCDでした。
ソニーのプロモーション活動も非常に力が入っており、この動画のプロを起用したアニメPVや、TVCM、有線でメルトやブラック★ロックシューターが繰り返し流されたり、渋谷の町をミクのジャケットイラストと歌でジャックするなど、人気一般アーティストと同じレベルの宣伝が行われました。この時期、町のいたるところで初音ミクの歌声が流されていて、人間の歌声と思って聞いていた人もいたようです。
結果、「supercell」はオリコン初登場デイリー2位、週間4位というヒットとなり、その後も売上げを伸ばし続けて数ヵ月後にはゴールドディスクに認定されました。
この非ネット層を狙った大々的なプロモーションと「supercell」ヒットはメディアで大きく報じられ、それによってミクファンが増えたかどうかは定かではありませんが、一般層への知名度を上げる意味では非常に大きな出来事でした。
「supercell」ヒットの後は、様々なレーベルから毎月のようにボーカロイド系CDが発売される発売ラッシュが始まり、ボーカロイドの歌がオリコン上位に入ることは珍しくなくなっていきます。
初音ミク発売直後に笑い話として語られた夢「町で当たり前のように初音ミクの歌が流れて、オリコン上位にボーカロイドの歌がいくつもランクインする」光景が実際に現実となったと考えると、感慨深いものがあります。
「supercell」発売後のryoさんは、中川翔子さんに楽曲を提供したり、アニメの主題歌を手掛けたりとプロとしての活動をするようになっています。
「ラブソングの大ヒットメーカー ryo作品」



 世界に広がる仮想歌姫「初音ミク」 新進クリエーターに迫る
新聞に掲載されると共にYouTubeで動画版が発表された、朝日新聞による新しい形の初音ミク特集記事です。動画版は連載形式で、第二回目には英語翻訳バージョンも作られて、日本人以外からも多くの反響が書き込まれています。(第1回英語版第2回第3回)
初音ミクやボーカロイドに関する一般メディアの報道としては、TV報道された一番最初のもの(TBS「アッコにおまかせ」のヤラセ特集)が酷いものだった為、当時を知るボーカロイドファンの中にはマスコミアレルギーと言ってもいいぐらいの拒否反応があります。その時に、騙されてオタクバッシングに利用された形になったクリプトンも、以後VOCALOIDの評判に関わる報道にはかなり慎重な姿勢を見せるようになったほどです。
初音ミクやVOCALOIDは今までにない新しい技術と文化であり、特にネット系文化に理解の少ないTV・新聞などのメディアでは、突っ込みどころだらけの的外れな紹介がされる傾向があります。
しかし、毎日新聞と朝日新聞は早くからミクに関する的確な解説記事を載せていて、特に朝日の特集は複数回行われ、ボーカロイド関連で最も的確な紹介記事とファンの中でも評価されています。
朝日新聞で初音ミク特集を担当する記者は、事実確認や予告のために何度か2ch本スレにも現れたことがあり、スレ住人にも劣らないほどの知識と正確な記事を称えられて「朝P」という名誉P名を贈られています。この動画も朝Pが作ったものですが、業務時間外に残業してこの連載記事と動画を作っていたそうで、かなりの情熱で作られた特集記事のようです。
一般にネット系メディアより高い信用度(ネット上では微妙ですが)を持つ朝日新聞の名で行われたこの特集は、ニコニコ以外のネットユーザーや、外国のYouTube視聴者、非ネット層の新聞読者に対しても、初音ミクを中心とするムーブメントがどういうものかを正確に解説する貴重な機会となりました。



 【Mac音ナナ】耳のあるロボットの唄【UTAU】
UTAUを象徴する人気曲「耳のあるロボットの唄」を、「Mac音ナナ」でカバーした作品です。
「Mac音(まくね)ナナ」はMac専門雑誌「Mac Fan」の誌上企画から生まれた音声素材集で、「Macの初音ミク」を目指して人気声優・池澤春菜さんの声を元に作られました。ネット上でダウンロード販売されています。
Reasonで使える「Mac音ナナ」と、GarageBandで使える簡易版「Mac音ナナPetit」がありますが、ニコニコ動画上ではUTAUの音源として使われることが最も多くなっています。
あくまで「音声素材集」であってVOCALOIDのような機能はなく、ちょっと変わった有料UTAU音源の一つという評価に落ち着くかと思われましたが、Mac音ファミリーの姉「Mac音ココ」が製作中であり、担当声優は「井上喜久子」さんであることが7月に発表されてボーカロイドファンを驚かせました。
池澤春菜さん・井上喜久子さんともに一線級の有名声優であり、その人脈でシリーズを増やしていくとすればいずれ一気に存在感が増してくるかもしれません。UTAUの技術も進化しており、今後に注目したいシリーズです。
「ミクの先輩後輩達・別ソフトのキャラクター」



 ケータイがくっぽいど登場!


 【初音ミク】「Survivor」【ぼかりす×匿名希望の東京都在住】
上は「NetVOCALOID」正式サービスの一つ「ケータイがくっぽいど」の公式解説動画、下は「Netぼかりす」αテスターの一人「杏あめ(匿名希望の東京都在住)」さんによる、Netぼかりすを使ったオリジナル曲です。
「NetVOCALOID(ネットヴォーカロイド)」はYAMAHAが開発した新技術で、ネットワーク上のサーバーでVOCALOIDなどの音楽ソフトを動作させる「Y2プロジェクト」として開発されました。
これは、ユーザーのデータ入力をネットで送信するとサーバー上のVOCALOIDやぼかりすが歌声合成したデータを送り返してくるというもので、直接ソフトを持っていなくてもPCや携帯からボーカロイドを歌わせる事ができます。
この「NetVOCALOID」の技術を使ったサービスは現在2種類発表されていて、その内非DTMユーザー向けのサービスである「ミクと歌おう♪」「ケータイがくっぽいど」は、VOCALOIDを所有していなくても携帯から気軽にミクやがくっぽいどに歌わせられるというサービスです。部分的に短い歌詞を入力できるだけというお遊び的なサービスではありますが、ネット上でVOCALOIDを動かすという技術は色々と応用が利きそうです。今後、たとえばゲームなどに応用する事もできるかもしれません。
もう一つの「Netぼかりす」はYAMAHAと産総研が協力して開発しているVOCALOIDユーザー向けのサービスで、その名の通り「ぼかりす」をネットを介して一般ユーザーにも使用できるようにするものです。
→「ぼかりす」については「人に近付くミクの歌声 ぼかりす騒動」
現在はまだαテストが行われた段階で、数人のP達が選ばれてテスターとして作品を発表しています。まだ一部の機能が使えないものの、使いこなす事ができればかなり人に近付ける事ができるようです。
この「NetVOCALOID」の開発は、YAMAHAがVOCALOIDのDTM音源としての性能を上げるだけでなく、より一般的な、様々な用途に使える技術に育てていこうとしている事を示しているのかもしれません。



 【初音ミク】無限の闇―echo of the past【オリジナル 】
「リッジレーサーシリーズ」や「太鼓の達人」など人気の高いゲーム音楽を手掛けた作曲家「細江慎治(めがP)」さんが作った初音ミクオリジナル曲に、「カードキャプターさくら」「ツバサ」「こばと」の原作や「コードギアス 反逆のルルーシュ」のキャラクターデザインで有名な人気作家集団「CLAMP」が手書きPVを付けた作品です。また、両プロを引き合わせてこの動画を投稿した「三原一郎」氏は、「ストリートファイターEX」シリーズの開発元である株式会社アリカの副社長でもあります。
非常に豪華な顔ぶれのプロによるコラボ作品で、CLAMP公式サイトで公開された動画制作の経緯についての説明によると、元々CLAMPが初音ミク作品が好きで、中でも特に気に入っていたのが細江慎治さんの初音ミク処女作「無限の闇」だったようです。そして、PVを作りたいと思い立って共通の知人である三原さんの紹介で細江さんへ連絡して許可を取り、忙しい仕事の合間にメンバーで少しずつ書き上げて完成させたPVだと説明されています。CLAMPが初音ミクファンだというのは他の雑誌でも語られていて、どうやら本当のようです。
元々ボーカロイドジャンルで活躍するPや絵師達の中には現役プロや元プロも多く、判明している人だけでもそそそP、はややP、シグナルP、とくPなどちょっと多すぎて全ては挙げられない位いて、作品を発表しています。必ずしもプロの作品に人気が出るわけではありませんが、この作品は特に有名な現役プロによるコラボのため大きな話題になり、ニュースサイトなどでも報じられました。


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テーマ : ボーカロイド ジャンル : 音楽

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