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2008.09.10 (Wed)

ボカロオリジナルを歌って合わせて演奏してみた

ボーカロイドは、音楽ジャンルとしてみた場合、ニコニコ動画でも珍しい一次創作を主体としたジャンルです。そのためカバーやアレンジを主体とする他の音楽ジャンルとのコラボレーションが容易で、オリジナル楽曲を提供する形で頻繁にコラボ作品が作られます。
「歌ってみた」「演奏してみた」「踊ってみた」などがその代表で、ボーカロイドが歌うP達のオリジナル曲を、人間が歌ったり、楽器で演奏したり、振り付けして踊ったりするわけです。
特に「歌ってみた」においては現在1/3~1/4程度がボーカロイド曲を歌っていて、「ボカロオリジナルを歌ってみた」という専用タグが付けられる一つのジャンルになっています。
基本的に合成音で作られる事が多いボーカロイド曲を、生のボーカルや楽器演奏に置き換える事で、DTM音源だけでは表現できない名作も生まれています。VOCALOIDの声が苦手で「ボカロオリジナルを歌ってみた」を専門に聞くという人もいるようです。
「歌ってみた」はニコニコ動画でも最も古くから人気のあるジャンルの一つですが、その時流行っている既存アニメの曲などを歌う事が多く、常に権利者削除の危険が伴います。
歌う(演奏する・踊る)曲選択の最も大きな基準は原曲への思い入れだと思いますが、ボーカロイドオリジナル曲であれば権利者削除の問題はなく、原曲のファンも多く視聴してくれるため「歌ってみた」で使われる機会が増えるという面もあるようです。
原曲側にとっても、派生動画の一つとして「歌ってみた」が作られて人気になると、リンクを辿って元曲も注目されることになり、より多くの人に作品を聞いてもらえるという効果があります。
相乗効果でどちらにも益のある理想的なコラボに思えますが、実際は両ジャンルのファン同士の認識の相違から荒れたり毛嫌いされる事も多く、なかなか難しい問題もあるようです。
今回は、様々なタイプの「ボカロオリジナルを歌ってみた」を中心に、他の音楽ジャンルとのコラボ作品を貼ってみたいと思います。




 「コンビニ」を歌ってみた(フルVer.)
「歌ってみた」ジャンルでトップクラスの人気を持つ男性ボーカリスト「halyosy」さんが、ミクオリジナル曲「コンビニ」をカバーした動画です。動画は手書きPV版を使用しています。
この動画はhalyosyさんの歌唱力と独自のギターアレンジで大人気となり、オリジナルを超えるほどの再生数になっています。「ボカロオリジナルを歌ってみた」は、元動画で配布されるカラオケ音源などを使ってそのまま歌を当てたものが主流ですが、この作品のように独自のアレンジや歌声に個性を出した作品が特に人気となる傾向があるようです。
歌い手のhalyosyさんは2chカラオケ板の元常連で、バンド「absorb」のメンバーとして活動もしているミュージシャンです。「ボーカロイド」「歌ってみた」両ジャンルの転機となったメルトブームがおきたきっかけの一つが、このhalyosyさんの初投稿動画「メルト」を歌ってみた(男性キー上げVer.)でした。
halyosyさんがメルトを歌って人気になると、その後を追うように「ガゼル」「青もふ」「あにま」「歌和サクラ」などの人気歌い手達が次々とメルトをカバーして、「歌ってみた」によるボーカロイド曲カバーの流れが広まる事になります。「歌ってみた」をきっかけに流入した新たなファン層によるボーカロイドジャンルの拡大・変質と、自演騒動で沈滞していた歌ってみたジャンルの復活を促し、両ジャンルの重なる「ボカロオリジナルを歌ってみた」が一気に定着したのも、このhalyosyさんの作品の影響が大きいと言えるでしょう。
しかし、実力もニコニコ動画に与えた影響も大きい反面、実名を晒している分アンチも多く、残念な事にプロがニコニコ動画で活動する事への反感を覚える層の不満や嫉妬のぶつけ先として標的にされている面があります。これは、匿名ネット文化の影響が強いニコニコ動画において、中の人がクローズアップされやすい「歌ってみた」ジャンルの抱える深刻な問題点の一つでもあるようです。



 メルト-Band Edition-女性キーVer-歌ってみました。by歌和サクラ
すべてのボーカロイド曲の中で最も多く「歌ってみた」が作られているのがこの「メルト」ですが、この動画はその中でも特に高い人気を持つ一つです。
単なるカラオケの「歌ってみた」ではなく、「ピルクル」「AS」「おぐにゃ」「ティッシュ姫」の四人の奏者が別々に投稿した「演奏してみた」動画を編集で合わせて「Band Edition」としたものに、「歌和サクラ」さんが歌をつけたコラボ作品です。
「演奏してみた」ジャンルも「歌ってみた」と同じくボーカロイドオリジナル曲をカバーする事が多く、特にryo作品などの人気曲には、多くの奏者がそれぞれの楽器で演奏して動画を投稿します。楽器の種類はギター・ベース・ドラム・ピアノ・ヴァイオリン・リコーダー・和楽器など様々で、この動画のようにそれらを合わせて、バーチャルバンドとして編集したものが作られる事もあります。
この動画で楽器を演奏している「演奏してみた」ジャンルの奏者たちもそれぞれ人気のある人達で、中でもベースを担当する「ティッシュ姫」(右下のコスプレの人)は「演奏してみた」を代表する人気奏者の一人です。自らアレンジなどもこなし、ボーカロイド曲を多く演奏しているだけでなく、自分で初音ミク曲を発表した事のあるPでもあります。ボーカロイドCDのベースを担当することもあり、ボーカロイドと関わりの深い奏者です。(ティッシュ姫のインタビュー記事)
また、ボーカルの歌和サクラさんは「歌ってみた」でトップクラスの人気を持つ女性歌い手の一人で、綺麗な歌声と高い歌唱力を持ち、やはり自分で曲のアレンジや作詞作曲もこなす実力派として知られています。歌うのはボーカロイドオリジナル曲専門で12もの殿堂入りを持つ他、ティッシュ姫と同じようにミクに歌わせた自作曲も発表しています。(歌和サクラさんのインタビュー記事)
このように、通常DTM音源で演奏され歌われるボーカロイド曲を「演奏してみた」「歌ってみた」の人達が生音に吹き代えた動画は、DTMの合成音が苦手な人達にも受け入れられやすく、新たなボーカロイドファン獲得にも一役買っているようです。
作曲・演奏・ボーカルをそれぞれ専門分野の人で分業するこのタイプのコラボは、プロの音楽活動に近いスタイルと言えるかも知れません。



 【★☆】合唱『ブラック★ロックシューター』-Band Edition【☆★】
[TEST]、うp主(ギタリスト)、紅い流星、地味侍、おぐにゃ、の5人による「演奏してみた」Band Editionと、ゴム、halyosy、nayuta、歌和サクラ、の4人の「歌ってみた」合唱+ミクを合わせた「ブラック★ロックシューター」の合唱シリーズ動画です。
「歌ってみた」ジャンルでは、人気曲を多くの歌い手が歌った場合、後に別の人によって編集されて一つの動画にまとめられることがあります。これが「合唱シリーズ」(もしくは「合わせてみた」)と呼ばれる作品で、多くの歌い手が一度に登場して、編集者の趣向を凝らした動画作りも楽しめる人気シリーズです。実際はパート分けしているわけではないので、合唱というより斉唱になります。
この動画に登場する「ゴム」「halyosy」「nayuta」「歌和サクラ」の四人は、いずれも「歌ってみた」ジャンルでは古参の歌い手達です。四人とも個性的な歌声で「歌ってみた」ジャンルでトップクラスの人気を持ち、特に「ゴム」さんのパワフルな熱唱は知られています。ボーカロイドとの関わりも深く、ボーカロイドオリジナル曲を多く歌っているだけでなく、nayutaさん以外の3人は自らボーカロイド曲を作って発表もしています。
また、この動画の編集者「裏ンティスの人」も、特に「ボカロオリジナルを歌ってみた」の合唱を多く作っている有名職人です。
合唱シリーズ動画には「アバター」や「覚醒」などの独特な編集手法がありますが、よく使われるお約束として定着しているクライマックスの元祖歌い手登場や、アバターの選択に元歌との関連を持たせる手法などは「裏ンティスの人」の作った作品の影響だと言われています。どちらも原作を尊重する演出で、元歌とファンに対する作者の配慮が感じられて、「歌い手」「原作」どちらのファンにも人気が高いようです。



 合唱『Just Be Friends』ってみた
Dixie Flatlineさんのルカオリジナル曲「Just Be Friends」を歌った「歌ってみた」作品を集めて合わせた合唱動画で、参加している歌い手は「halyosy」「ゆ~だ」「Pe:」「祭屋」「みつむし」「シャノ」「みちる画伯」「歌と猫(投稿者名)」「meola」「ヲタ姐」「色葉」さんと「巡音ルカ」です。
恋人の切ない別れをルカが歌った「Just Be Friends」は「歌ってみた」でも大きなブームとなり、2009年ニコニコ動画で最も多く歌われた曲「magnet」や、「炉心融解」「ロミオとシンデレラ」などと並んで歌ってみたジャンルの定番曲になっています。
「歌ってみた」では歌い手が人気曲に集中する傾向があり、この曲にも様々な組み合わせで30以上の合唱動画が作られています。「合唱動画を合わせた合唱動画」があるほどです。
ボーカロイド曲の合唱だけを繋げたツアーが企画されて好評を得たり、曲によっては大迫力の130人合唱227人合唱なども作られていて、もう一つのジャンルと言えるかもしれません。



 「千年の独奏歌」を歌ってみたSquaDus
KAITOの代表曲「千年の独奏歌」を、SquaDus(スクァドゥス)さんが歌った「歌ってみた」動画です。
独特の訛りのある低音ボイスと、民族風の原曲イメージをさらに膨らませた異国情緒溢れるアレンジが人気の動画で、日本語で歌っていますが歌い手のSquaDusさんはイスラエルの人です。投稿は恐らくイスラエルからで、日本語も堪能ではないそうですが、歌ではかなり正確な発音なのでかつては日本人疑惑もあったほどでした。
ニコニコ動画のボーカロイド作品は、世界最大の動画投稿サイト「YouTube」にも多く転載されていて人気もあり、国外のボーカロイドファンも少なくないようです。そのため、YouTubeやニコニコ動画には外国人作者のボーカロイド曲(日本語ボーカロイドを使ったもの)や、MMD動画、外国語の歌ってみたなどもかなりの数が投稿されています。
外国人の歌い手による「ボカロオリジナルを歌ってみた」の代表的な作品としては、多くのボーカロイド曲を日本語で歌っている香港の歌い手「ほんこーん」さんによる「メルト」や、ベネズエラ人によるスペイン語の「ココロ」、中国人留学生「パンダ氏」が中国風の原曲を中国語に翻訳して歌った「紡唄 -つむぎうた-」などがあります。



 【トゥライ】「celluloid」歌ってみた
bakerさんの初期の代表曲「celluloid」を、人気歌い手「トゥライ」さんが歌った動画です。
この曲はボーカロイドブーム最初期に人気になった曲で、ボーカロイドオリジナル曲で一番最初に「歌ってみた」で歌われた曲だと言われています。後に「メルト」をきっかけに流行し、「歌ってみた」の主要ジャンルになっていく「ボカロオリジナルを歌ってみた」の原点と言える曲かもしれません。
多くの歌い手がこの曲を歌っていますが、その中でも最も再生されているこの動画の歌い手「トゥライ」さんは、奇をてらわない綺麗な歌声と歌唱力の高さでトップクラスの人気を持つ男性歌い手です。そして、同時に有名ボーカロイド作者「流星P」でもあります。
当初は同一人物だと明かさずに両方の分野で人気を獲得していた多才の人で、ボーカロイドPとしてミリオン(magnetRIP=RELEASE)、歌い手としてハーフミリオン(炉心融解サンドリヨン)の作品をそれぞれ複数持っています。「トゥライ」として活動する時はボーカロイド曲を専門に歌いますが、「流星P」のボーカロイド曲を「トゥライ」として歌う事はほとんどありません。唯一「magnet」で、自作曲を自分で歌っています。
自分の歌を自分で歌うボーカロイドPは割と多くいますが、ネタ扱いではなく歌ってみたでも高く評価されている人としては他に、ボーカロイド・歌ってみた両方で殿堂入りを持つ「samfree」さん、ボーカロイド曲として発表した自分の曲を自分で歌うといつも再生数を越してしまう「ボカロ殺し」の異名を持つ「杏あめ(匿名希望の東京都在住)」さんなどがいます。
また、それとは逆に有名歌い手が自作ボーカロイド曲でも高く評価された例としては、halyosyさんの「桜ノ雨」「Fire◎Flower」や、ゴムさんの「Good-Morning!」などが代表的です。
→「魅惑の美声ルカ・マスター 流星P作品」へ



 【歌ってみた】少年銀河【ショーター】
トラボルタPのレンオリジナル曲「少年銀河」を、ショーターさんが歌った動画です。
ショーターさんは独特のハスキーな声とゆったりとした歌い方をする個性派の歌い手で、原曲のレンとはまったく違う印象の歌声ですが、ひたむきに夢を追う少年の姿を歌ったこの曲を自分なりに歌いこなしています。原曲とはまた違った良さがあり、特にラストのサビ部分の熱唱は思わず引き込まれます。この作品のような独特の歌唱をボーカロイドで作るのは難しく、人間の歌い手ならではと言えるかもしれません。
ショーターさんは有名な歌い手というわけではありませんでしたが、この作品は新着動画をランダムに流すことで埋もれる新作を減らそうと開始された公式生放送「世界の新着動画」に選ばれたことで人気になりました。「世界の新着動画」が理想的な効果を発揮した例と言えるかもしれません。


最終更新・2010/1/13 人気ブログランキングへ ←押してもらえると励みになりますm(_ _)m

テーマ : ボーカロイド ジャンル : 音楽

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